お薬遍歴その2…SSRI

昨日の続きである。
そういうわけで、私のうつ病治療は暗礁に乗り上げてしまった。
しばらく、悶々と仕事が出来ない日々が続いた。

プロザック

そんなある日、と言うかそれ以前から、
プロザック」と言う薬の噂は聞いていた。
アメリカでいち早く発売され、2週間飲むとうつ病の人が、
あれよあれよと言う間に意欲モリモリの人間に変わってしまう。
あちらではニューズウィークの表紙も飾り、一大ブームとなって、
何と、うつ病で無くともこの薬を服用し、人為的に意欲を高めて、
仕事や趣味に、より効率的に取り組もうと言う人までいると言う。
まさに「夢の薬」であると、喧伝されていた。


プロザックはのような薬はSSRIと呼ばれている。
SSRIとは Selective Serotonin Reuptake Inhibitorの略で、
日本語にすると「選択的セロトニン再取り込み阻害剤」である。
これはうつ病は脳内のセロトニン不足で起こると言う仮説に基づき
脳内シナプスでのセロトニン再吸収を阻害して、
シナプスでのセロトニン濃度を高めうつ病を改善すると言う理論に
基づいている薬である。
従来の三環系抗うつ薬が、ノルアドレナリン再吸収阻害剤である、
ことから類推して、開発されたと思われる。


うつ病になる前から、所謂スマートドラッグに興味のあった私は、
この話を聞いて半信半疑ながら是非この薬を服用したいと思った。
もちろん日本では承認されていないので飲めない。
どうしたら良いか?
そこで個人輸入代行に思い当たった。
ネットで調べてみると、すでにあちらこちらで売っていた。
しかし、当然ながら高い。
しかしこれで、この苦しいうつ病から逃れて、
仕事がうまくできるようになるなら、安いものだ、とも思った。


しかし結局、買わなかった。
やけに効き過ぎるのと、副作用に関する情報が無く、
試してみるには、不安すぎたのである。
待ってみる事にしたが、中々この薬は日本で承認されなかった。

ルボックス

そんな中、1999年5月25日、突然「ルボックス」という、
SSRIが藤沢薬品(現在のアステラス製薬)から発売される、
と言うニュースが、医者からもたらされた。
早速、処方してくれと頼むと、あっさり薬は手に入った。
期待は大きかった。
これを2週間続けて飲めば、うつ病は解消して、仕事が出来る、
と思うと、沈んだ心なりに心が弾んだ。


しかし飲み始めて2週間たっても、余り変化は見られなかった。
まだ、期間が短いのだろうと思ってさらに一ヶ月続けたが、
やはり目立った改善は見られなかった。
私としては昨日書いた「デパス」を初めて飲んだときのような、
ウキウキ感を予想していたのだが、全く無い。
期待は次第に、落胆に変わっていった。
しかし、もともと気分が沈んでいるので、
効かなかったと言う事によるショックは余り無かった。

☆その後…アメリカへ

ルボックスが効かないまま成り行きで、
アメリカに逃避行する事になった。
2000年4月の事である。
効かないけれども最後の頼みの綱なのでやめるわけにはいかない。
医者に頼んで、処方を続けてもらい、
毎月アメリカまで送ってもらった。


向こうでも、日本人でアメリカでの営業資格を持つ精神科医に、
見てもらった。
そこにでは日本では承認されていない、
セラクサ」という新しい、売出し中のSSRIを処方されて、
ルボックスの代わりに飲み始めた。
しかし、これも顕著な効き目は無かった。
まあしかし、アメリカへ行って、日本であった嫌な事を忘れて、
のんびり生活をすることはそれ自体うつ病の治療になったようで、
アメリカ時代は、気分も含めて大変幸せな期間であった。
であるから、薬の効き目もわからなかったのかもしれない。


しかし、幸せな期間なんて長くは続かない。
まして、逃避行である。
ちょうど2001年の9.11同時テロと機を一にして、
帰国を余儀なくされ、同時に失職した。

☆帰国後…トレドミンパキシル

日本の医者に報告すると、今度は「トレドミン」と言う、
SNRIを処方された。
SNRIはSSRIの機能に加えノルアドレナリン再吸収阻害の、
機能も併せ持つ薬だそうである。
SSRIと三環系抗うつ薬を同時に飲むようなものだ。
これも一ヶ月近く飲んだが、ほとんど効かない。

☆主治医交代

その後、診療所は変らないのであるが、
時間の都合で主治医が代わることになった。
前の医者には世話にはなったが、余りにも進歩が無いので、
新しい医者に代わる事には抵抗は無く、むしろ淡い期待があった。


新しい医者に処方されたのは「パキシル」である。
この薬は体内半減期が長く、一日一錠で良いのが特徴である。
実は、私は何べんも言うが、生活サイクルが狂っていた。
だから、1日2錠だと、どこまでが1日か判別できず、
本当に1日2錠飲んでいるのか、自信がなかった。
でも、1日1錠なら間違いない。
期待をかけて飲んだ。
しかし、やはり効かなかった。


医者はSSRIはもう止めると言った。
余談だが、うつ病治療については、薬物治療とは別に、
認知療法」と言うものが、注目を浴びていた。
認知療法」についてのベストチョイスは次の本である。

〈増補改訂 第2版〉いやな気分よ、さようなら―自分で学ぶ「抑うつ」克服法

〈増補改訂 第2版〉いやな気分よ、さようなら―自分で学ぶ「抑うつ」克服法

詳しくは書かないが、この治療法ははじめは、驚くほど、
気分の改善に効果をあらわした。
これはあの時の「デパス」以上である。
しかしこの方法は、自分が何か行動する事を前提にしている。
引きこもりの私には、現在人と接触して嫌な思いをすることは、
ほとんどないので、うつ病の治療法としては私向きではない。
また、この療法をするには、自ら行動を起こす必要があり、
重いうつ病の人は、治療にすら行動に移せないと言う事もある。
よって、現在私は、基本的にはこの治療法は行っていない。
しかし、気分の改善には効果があるので、たまに用いていて、
効果があるのは確かであり、もっと行動できるようになったら、
この方法もしっかり取り入れたいと思ってはいる。


話が脱線したが、結局薬を止めてからは、
積極的な治療はしていなかったのである。
それでもこの医者は前の医者と異なり、毎回じっくりと私の話を、
聞いてくれて、毎回色々な解決策を提示してくれた。
私にはこのことが何よりであり、この医者に見てもらうと、
将来にわずかな希望が見えるような気がした。
うつ病自体は改善しなかったが。

☆元のもくあみ

ところが、昨年12月末を以って、
この医者は診療所から異動になってしまった。
そして、またあの、お薬処方の医者に戻ってしまった。
落胆したが、それならば私はもう一度SSRIを、
ちゃんと飲んでみたいと思いなおした。
ちょうど新しく「ジェイゾロフト」が発売になり、
処方してもらった。
しかし願いもむなしく、1ヶ月飲んでもやはり効かなかった。


これまでの経過を見ると、私は日本で発売されたSSRIは、
ほとんど全て飲んでみた事になる。
SSRIには、最近、その有効性や安全性に疑問も出ている。
それについては生田哲著「うつを克服する最善の方法」
と言う本に詳しい。

「うつ」を克服する最善の方法 (講談社+α新書)

「うつ」を克服する最善の方法 (講談社+α新書)

この本はその書名に反して、ページ数にして内容の3/4は、
激しいSSRI批判である。
SSRIは効かないばかりか、危険な副作用に満ち満ちていると、
主張している。
さらに、効能を喧伝するのは利益のみを追求する、
製薬会社の陰謀であると言う意味のことまで述べている。
はっきり言えば、だまされて飲んではいかん!と言う事である。


私はこの本の主張には、全面的には組しない。
主張の根拠になる、一次資料の提示がほとんどないからである。
しかし、火の無いところに煙は立たない。
実際にSSRIの副作用が原因と認められた、
重大事件もおきている。
SSRIは功も大きければ害も多い、両面性を持った薬である、
と言う事はいえると思う。
それがどれほどのものかは、将来的に見究めねばならないと思う。


私に限って言えば、功は無かった。
害は、気分の悪化、性欲減退くらいで、重大なものが、
無かったのは、幸いである。
しかし期待が大きかっただけに、落胆の色は隠せない。
ちなみに、この騒ぎの元になったプロザックは、
まだ日本では売っていない。
現在、承認手続き中だという噂がある。
しかし、仮に発売されたとしても、もう飲まないであろう。

☆☆ところが!!

ジェイゾロフトをあきらめて、失意に陥り、もうどうしようか、
と途方に暮れていた。
しかし、ところが!である。
この続きはまた今度。

☆やったこと

1)光治療。
2)新聞を8ページほど読んだ。
3)大相撲を幕下上位から幕内まで見た。
4)DVDを焼いた。
5)某SNSをチェック。
実は今日は調子が悪かったのである。
倦怠感のほかに、強い焦燥感が出た。
しかしそういう日に限って、日記が長文になる。
良いことなのか、悪い事なのか??